新元号「令和」の典拠ともなった『万葉集』は、おもに奈良時代に編纂された日本最古の歌集。千年以上にわたって日本人の間で詠み継がれてきました。
写真家・三田崇博氏とともに万葉ゆかりの地へと赴き、わたしたちが忘れかけている日本の心を再発見する旅に出てみましょう。
今回のご紹介の歌はこちらです。
大君(おほきみ)の
三笠の山の黄葉(もみぢば)は
今日のしぐれに
散りか過ぎなむ
(巻八・一五五四 大伴家持)
三笠の山のもみじは
今日の時雨で散り果てるだろうか
万葉集のふるさと奈良。
詠み継がれる“もみじ”
晩秋の奈良、山々は、見事な紅葉に包まれる…。万葉の旅を始めるならば、まず万葉集のふるさとともいえる奈良を訪ねてみるべきだろう。
上の和歌は万葉集巻八に収載された大伴家持のもの。三笠山の“もみじ”が、今日の時雨で散ってしまうかもしれない、そんな名残惜しさを歌に込めたのだろうか。
ところで万葉集に“もみじ”を詠んだ和歌は80首以上あるが、そのうち「紅葉」としたものはほんのわずかで、ほとんどが「黄葉」と記している。現代の我々からすると、「黄葉」より「紅葉」のほうが視覚的にしっくりくると思うのだが…。
調べてみると、やまとことばの葉の色が変わる「もみち」に漢字をあてる際、中国の「黄葉」を手本にしたことがその理由の一つということである。 いずれにしても、その素晴らしい景色をカメラにおさめるのは、やはり心が躍る。