秩父の伝統、夜祭を訪ね
歴史と名物に出会う旅

埼玉・秩父

CedynaNews 2018年11月号より

夜祭りの華 写真提供: 秩父観光協会

夜祭りの華
写真提供: 秩父観光協会

日本三大曳山祭のひとつに数えられ、2016年にはユネスコ無形文化遺産にも登録された秩父夜祭。この日本を代表する冬の祭りの魅力に触れたいと、埼玉県秩父市へと向かいました。

秩父地方は四方を山に囲まれた盆地にあり、神社仏閣がとても多く、一年を通して祭りが盛んな土地柄です。

秩父市だけでも年間300を超える大小の祭りがあり、これからの時期は、12月2日と3日に一年の総決算となる秩父夜祭が控えています。

武甲山に見守られて 写真提供: 秩父観光協会

武甲山に見守られて
写真提供: 秩父観光協会

この祭りは、秩父の総鎮守である秩父神社を代表する行事です。古くは春に水神である武甲山の龍神様を里に迎え、農作業や収穫を見届けていただいたあと、初冬に武甲山へ送るという風習に根ざしたものでした。

やがて、秩父神社の妙見様(女性の神様)と武甲山の龍神様(男性の神様)が、年に一度出会う祭りとして定着。江戸時代には、今日のような豪華な山車が祭りを彩るようになります。

夜祭の山車は、不老不死の仙人が住むという蓬莱山を表した笠鉾(かさぼこ)2基と、町ごとに用意する屋台が4基。屋台では、各町内の有志が練習を重ねた歌舞伎や曳き踊りが披露されます。

秩父まつり会館外観

秩父まつり会館外観

市内に、いつでも秩父夜祭の雰囲気を楽しむことができ、祭りの関連資料を展示する「秩父まつり会館」があると聞いて、まずはそちらを訪ねました。

音と映像で夜祭を体験
秩父まつり会館

1階の笠鉾・屋台コーナーに入ると、巨大な笠鉾と屋台が出迎えてくれました。

「これは本番で使われる山車を再現した模型ですが、極彩色の彫刻も造りも本格仕様です」と教えてくださったのは、案内役の千島さん。

秩父まつり会館に展示されている笠鉾・屋台は、昭和の名工・坂本才一郎の手によるもの

秩父まつり会館に展示されている笠鉾・屋台

夜祭本番の見どころをお聞きすると、「3日の夜、祭りは最高潮に達します。10数トンある笠鉾や屋台が団子坂という坂を駆け上がる場面は、まさに圧巻。クライマックスの花火も見逃せません。冬は空気が澄んでいるので、格別にきれいに見えますよ」とのことでした。

また、お囃子の太鼓のリズムにも特徴があるそうで、屋台が方向転換をしたり、直進したり、坂を駆け上がる時、叩き方を変えて曳き子を鼓舞している点にもぜひ注目してほしいそうです。

笠鉾や屋台の方向転換の際に行われる「ギリ廻し」の迫力ある場面 写真提供: 秩父市役所

笠鉾や屋台の方向転換の際に行われる「ギリ廻し」の迫力ある場面
写真提供: 秩父市役所

会館では、プロジェクションマッピングの音と映像を使って、夜祭の臨場感あふれる様子を疑似体験できます。

秩父を代表する11の祭りを立体映像で紹介する3Dシアターや展示資料もあり、秩父の祭りの知識も深まりました。

秩父まつり会館2階の資料展示コーナー。秩父夜祭の歴史、構成がよくわかる

秩父まつり会館2階の資料展示コーナー。秩父夜祭の歴史、構成がよくわかる

御社殿に施された
秩父神社の彫刻は必見

続いて、夜祭の神事を執り行う秩父神社へ。

こちらは秩父地方を拓いた知知夫(ちちぶ)一族の氏神様ということで、地名の由来にもなった歴史ある神社です。

夜祭当日には国指定重要無形民俗文化財の神楽が境内で行われ、お神輿を先頭に笠鉾や屋台が続く、御神幸(ごしんこう)行列の出発点となります。

県指定有形文化財である秩父神社本殿

県指定有形文化財である秩父神社本殿

現在の御社殿は天正20年(1592年)に徳川家康公によって寄進されたもので、建物に施された数々の彫刻は必見です。秩父神社の新井さんに、そのなかでも注目のものを伺いました。

「最近人気なのが、社殿の西側にある三猿です。三猿というと日光東照宮が有名ですが、あちらは〝見ない、言わない 、聞かない〞子猿の彫刻ですね。こちらは〝見て、聞いて、話す〞猿がお年寄りの姿で彫られています。年を取ったらこのように生きた方が長生きにつながる…という絵解きから、お元気三猿と呼んでご紹介しています」とのこと。

見て、聞いて、話す姿から長生きの秘訣を教えてくれる「お元気三猿」

見て、聞いて、話す姿から長生きの秘訣を教えてくれる「お元気三猿」

ほかにも、日光東照宮の「眠り猫」と同じ、左甚五郎の作といわれるものもあり、幕府お抱えの職人たちが手がけた素晴らしい彫刻を楽しむことができます。

夜祭の絵柄をあしらった御朱印帳

夜祭の絵柄をあしらった御朱印帳は、旅の記念にも

名物といえば、コレ!
安田屋のわらじかつ丼

少し歩いてお腹が空いたので、秩父のご当地グルメ「わらじかつ丼」を食べてみようと、その名付け親になったというお店を訪ねてみました。

秩父神社から車で10分ほど。
安田屋 日野田店のわらじかつ丼は、丼のフタからはみ出すほど大きなカツが2枚のっていて、迫力満点。休日には行列ができる人気のお店です。

ご主人いわく、
「そもそも小鹿野町にある本店が、かつ丼と酒のつまみ用のカツを一緒に提供したのが2枚入りの始まりです。私が40年程前にこの店を構えた時、取材に来た新聞記者がこれを見て『わらじみたいだね』と言ったのが、命名のきっかけになりました」。

わらじかつ丼の2枚入り(税込1,080円)と1枚入り(税込864円)

メニューは、わらじかつ丼の2枚入り(税込1,080円)と1枚入り(税込864円)のみ。お土産にもできる。ただし、秩父夜祭の当日はお休みとなります

ひと口食べてみると、風味豊かな秘伝のタレがからんだ衣が絶妙な口当たり。丁寧に下ごしらえをしたヒレ肉は驚くほど柔らかく、赤身肉のため重くもありません。

「どちらかというと女性向きかもしれませんね」とご主人が言う通り、お年寄りや子どもにも喜ばれるおいしさでした。

秩父の歴史に触れ、夜祭の魅力を探訪した今回の旅。12月3日にはしっかり防寒をして、本物の夜祭を観に再びこの地を訪ねてみようと思います。

掲載している店舗・施設の詳細は
下記HPよりご確認いただけます。

秩父まつり会館
http://www.chichibu-matsuri.jp

秩父神社
http://www.chichibu-jinja.or.jp

(掲載の情報は、2018年10月1日現在のものです)

取材後記 取材後記

まつり会館では傘鉾や屋台を間近で堪能できました!
秩父夜祭りのプロジェクションマッピングや音楽も相まって、まるで夜祭りに行ったかのような気持ちになれます。

秩父観光大使の林家たい平さんのデザインされたエコバックと、プロデュースされたカレーを自分のお土産に。
エコバックは大きめのサイズなのでお出かけにぴったり!まつり会館の売店で購入できますよ~!

取材が終わった後に、「西武秩父駅前温泉 祭の湯」の中にあるセタリアさんでジェラートを購入し、お疲れ様の乾杯。「マスカルポーネ」と、秩父銘酒「秩父イチローズモルト」味をセレクトしたのですが…なんとこれが大正解でした!!
口の中でウイスキーとチーズが混ざり合い、なんとも絶妙な大人スイーツの味わいに!猛暑での撮影の疲れを癒してくれました。