琵琶湖に浮かぶ
神秘の島、竹生島へ

滋賀・長浜

CedynaNews 2018年9月号より

琵琶湖の北に浮かび、古くから「神の棲む島」と呼ばれる竹生島(ちくぶしま)

琵琶湖の北に浮かび、古くから「神の棲む島」と呼ばれる竹生島(ちくぶしま)。草創(そうそう)1300年を迎える西国三十三所の第三十番札所「宝厳寺(ほうごんじ)」をはじめ、島に刻まれた信仰の歴史を辿ります。

日本人は古くから、四国のお遍路さんや秩父の札所巡りなど、霊場をたどり祈りを捧げる旅を続けてきました。なかでも1300年前に始まったとされる「西国三十三所」は、まさに日本最古の巡礼路です。

養老2年(718年)、大和国長谷寺の開祖・徳道上人が閻魔大王からお告げを受け、33の宝印と起請文を授かったことが始まりとされる西国三十三所。この数字は、観音菩薩が33の姿に身を変えて、人々を悩みや苦しみから救うという信仰に基づくものだそうです。

竹生島の港

竹生島の港

巡礼路の総距離は約1000キロにもおよび、和歌山、大阪、奈良、京都、滋賀、兵庫、岐阜と近畿圏を包むように延びています。草創1300年を記念して、各地の札所ではさまざまな催しが行われているとのこと。今回は、神秘の島と呼ばれ、第三十番札所「宝厳寺」のある竹生島への旅に出かけてみました。

「祈りの階段」と呼ばれる石段。

「祈りの階段」と呼ばれる石段

湖に浮かぶ聖地で
日常を離れた時間を

竹生島へは、長浜港から約30分の船旅です。湖面すれすれに飛ぶ水鳥の姿、遠くにかすむ山々の眺めを楽しむうち、厳かに佇む緑の島が見えてきました。

周囲約2㎞の竹生島は、島全体が花崗岩の一枚岩からなり、周囲を切り立った崖に囲まれています。その地形は、本堂へと続く165段の急な石段からも分かります。

一段一段に寄進した人々の住まいや名前が彫られている

一段一段に寄進した人々の住まいや名前が彫られている

「その石段に、文字が彫られていたことにお気付きでしょうか」とお話しくださったのは、宝厳寺管主の峰覚雄さんです。石段に使われた御影石をはじめ、寺の伽藍の大きな柱、部材の一つ一つもすべて島の外から運ばれてきたもの。石段に彫られていたのは、寄進した人たちの住まいや名前なのだそうです。

現在のように大きな船も機械もない時代に、危険をかえりみず建物を築いた人。それを寄進という形で支えた人。そうした人々の祈りの心が、竹生島には深く刻まれているようです。

「日本三弁財天」に数えられる大弁財天を祀る、宝厳寺の本堂

「日本三弁財天」に数えられる大弁財天を祀る、宝厳寺の本堂

宝厳寺のご本尊は、もともとインドの水の女神である弁財天と、水との関わりが深い観音菩薩。その聖地が湖の中の小島にあるということが、古くから多くの人の信仰心を集めてきたのでしょう。

朱色が美しい三重の塔。草創1300年記念事業の一環として、2018年10月15日~2018年10月31日の期間には普段非公開の開扉を見ることができる

朱色が美しい三重の塔。草創1300年記念事業の一環として、2018年10月15日~2018年10月31日の期間には普段非公開の開扉を見ることができる

「湖に浮かぶ島ですから、にぎやかな街の音もしません。船の時間が来るまで、自由に帰ることもできません。そうした日常と違う空間と時間を味わっていただきたいですね」(峰さん)

境内では、豊臣秀吉が建てた大坂城の一部を移築したといわれる唐門や、本尊の千手観音を安置した観音堂など歴史的な建造物の保存修理作業が進み、来年の完了が待ち遠しく思えました。

保存修理作業が進む観音堂の中で、一部修復を終えた色鮮やかな天井

保存修理作業が進む観音堂の中で、一部修復を終えた色鮮やかな天井

琵琶湖の絶景に向かい
願いを込めて

続いて向かったのは、都久夫須麻神社(つくぶすま)(竹生島神社)です。
もともと竹生島は神仏習合の聖地でしたが、明治政府の神仏分離令によって宝厳寺から分離する形で神社が建てられました。宝厳寺の観音堂とは渡り廊下でつながっており、二つの祈りの場が深く固く結びついていることをうかがわせます。

連子窓から光の射しこむ渡り廊下は、秀吉の乗った御座舟を利用して作られたものとの伝承から、「舟廊下」と呼ばれます(重要文化財)。本殿(国宝)も秀吉の居城、伏見桃山城から移築されたと伝えられる、豪華な桃山様式で見応えがあります。

宝厳寺と都久夫須麻神社をつなぐ舟廊下

宝厳寺と都久夫須麻神社をつなぐ舟廊下

石段を下りた先にある「竜神拝所(りゅうじんはいしょ)」は、竹生島一の絶景ポイント。ここでは素焼きの皿に願い事を書いて願掛けをする、「かわらけ投げ」ができます。

皿は2枚一組で、1枚に名前、1枚に願い事を書きます。それを鳥居に向かって勢いよく投げ、うまく鳥居を通り抜ければ願いが成就するというもの。薄くて軽いかわらけを思い通りに投げるのは難しいものの、2枚目はうまく風に乗って鳥居の柱の元へ届きました。さっそくお参りの御利益があったようで嬉しくなりました。

2枚のうち1枚に願い事を書く

2枚のうち1枚に願い事を書く

竜神拝所は人々が投げた白い土器(かわらけ)で埋め尽くされている

竜神拝所は人々が投げた白い土器(かわらけ)で埋め尽くされている

鳥居越しには、琵琶湖の絶景が見渡せます。1000年を超える昔から、長い旅の末に島を訪れた人々も、きっと立ち去りがたい思いでこの景色を見つめたことでしょう。胸に刻まれた竹生島の姿は、これからも心の御守りになってくれそうです。

掲載している店舗・施設の詳細は
下記HPよりご確認いただけます。

宝厳寺
http://www.chikubushima.jp

竹生島神社
http://www.chikubusima.or.jp

(掲載の情報は、2018年8月1日現在のものです)

取材後記 取材後記

島に到着した途端にどんよりした曇りから快晴に変わり、好調なスタートをきることができた今回の取材。取材を進める中で、重たい荷物を持ちながら石段を上ったり下りたりしていたため、最後は足がガクガクに!笑
急な階段で歩幅の違う段も多いので、履き慣れた運動靴で行くのがおすすめですよ。

取材時、唐門は修復工事中のため見られず……無念!
ですが、本誌でもご覧の通り少しずつ出来上がってきています。完成披露が楽しみですね!

舟廊下は、一足早く修復工事が終わっていたので見ることができました。右の写真は舟廊下の土台部分。この横にある道は日陰になっているので涼しく、通ると気持ち良いですよ~!

帰りの船に乗る待ち時間に、ここやさんで購入したアイスもなか(抹茶)!たくさん歩いた体にひんやりあま〜く染み込んで、疲れが吹き飛びました笑
皆様も、竹生島を訪れた際はぜひご賞味くださいませ!