秋田犬のふるさとで
心はずむふれあい旅

秋田・大館

CedynaNews 2018年7月号より

秋田杉約25,000本を使用した世界最大級の木造ドーム『ニプロハチ公ドーム』前にて

秋田杉約25,000本を使用した世界最大級の木造ドーム『ニプロハチ公ドーム』前にて

近ごろ話題となり、人々の関心が高まっている国指定天然記念物・秋田犬。その発祥の地である大館市をはじめ、秋田の県北エリアを満喫する夏の旅を、今月と来月にわたってお届けします。

まずは秋田犬とふれあい、世界が注目するその魅力を間近で感じてみたいと、秋田犬のふるさと・大館市へ向かいました。

鉱石と秋田杉の美林に恵まれ、県北の政治、経済、文化の中心として発展した大館地方。市街地には長木川の清流が流れ、人々は温かく、のんびりと落ち着いた雰囲気が漂っています。

大館駅前の風景

大館駅前の風景

この地で観光のシンボルとして活躍する秋田犬がいると聞き、まずは会ってみようと、JR大館駅の目の前に建つ、秋田犬ふれあい処を訪ねました。

ここを拠点に活動しているのは、県外から移住し、秋田犬ふれあい隊として犬と共に暮らしながら大館市と秋田犬のPRに励む女性スタッフ2名。そして、昨年4月より大館駅の観光駅長にも任命されている秋田犬の姉妹、赤毛のあこ(メス)と、虎毛の飛鳥(メス)の2頭です。

あこと飛鳥に会える
秋田犬ふれあい処

秋田犬ふれあい処は、市の観光課に寄せられた「大館に来ても秋田犬に会えない」という、多くの声がきっかけとなり誕生しました。あこと飛鳥が交代で観光客を出迎え、休日には行列ができるほどの人気となっています。

2頭は市の式典や交通安全活動など地域のイベントにも参加していて、休みの日はそのためのトレーニングもしているそうです。

虎毛の飛鳥(左)と赤毛のあこ(右)。秋田犬ふれあい処には2頭が交代で登場

虎毛の飛鳥(左)と赤毛のあこ(右)。秋田犬ふれあい処には2頭が交代で登場

この日、私たちを待っていてくれたのは飛鳥でした。おてんばな性格と聞いていましたがとても大人しく、つぶらな瞳でジーッとこちらをチェック。フカフカの毛を思う存分触らせてくれました。来客が少ない時は、一緒に写真を撮ることもできます。

「ハチ公の話で有名ですが、秋田犬は主人にとても忠実です」「凛とした立ち姿はもちろん、世話をしたらしただけ心が通い合う感じが魅力ですね」と、実際に秋田犬と過ごしているスタッフのお二人だからこそのお話を伺いながら、貴重なふれあいを体験し、楽しいひとときを過ごすことができました。

この日出迎えてくれた、愛嬌たっぷりの飛鳥とふれあう様子

この日出迎えてくれた、愛嬌たっぷりの飛鳥とふれあう様子

天然記念物・秋田犬の
資料を一堂に集めて

続いて、秋田犬会館に向かいました。こちらは雑種化を食い止めるために昭和2年に設立された、秋田犬保存会によって運営されています。

「秋田犬は狩猟犬、番犬、闘犬などの歴史を経ているので、体が丈夫で我慢強く、人に懐きやすい犬種です。飼育環境が難しい大型犬のため国内では減少傾向にありますが、海外での人気は高く飼育頭数も増えています。ふれあいイベントやホームページを通して、秋田犬の魅力をさらに広めていきたいですね」と、保存会の佐々木さん。

平日は1階のエントランスや事務所内に秋田犬がいて、事務所内にいる犬とはふれあうこともできます。また、3階の博物室には秋田犬に関するさまざまな資料が展示されていて、歴史や生態について詳しく知りたい方におすすめです。

秋田犬会館外観

秋田犬会館外観

秋田犬会館3階にある博物室

秋田犬会館3階にある博物室

博物室の中にある展示のひとつ「猟師定六と忠犬シロ」の物語に興味を持ったら、シロが祀られている老犬神社へ足を延ばしてみるのも面白いと思います。

忠義な犬を祀る全国的にも珍しい神社

忠義な犬を祀る全国的にも珍しい神社

老犬神社内観

老犬神社内観

大館のおふくろの味
本場きりたんぽ鍋

大館を訪れた際は、きりたんぽ鍋も外せません。秋田犬とたくさん遊んでお腹も空いたので、東大館駅からほど近いきりたんぽ鍋の専門店を訪ねます。

そもそもきりたんぽ鍋は、県北では一年中家庭で食べられているおふくろの味。特に大館は、スープや具材に欠かせない比内地鶏の産地でもあり、きりたんぽ鍋の本場といわれています。
今回訪ねた元祖むらさきでは、女将や従業員がテーブルで手順や具材について説明をしながら作ってくれます。秋田民謡が流れる店内で、「鍋っ子」「つゆっこ」「ごんぼ」などの女将の秋田弁を聞き、会話を楽しみながら完成を待ちます。

きりたんぽのサイズが大きいため、元祖むらさきでは1本が一人前

きりたんぽのサイズが大きいため、元祖むらさきでは1本が一人前

鍋には、女将が先代の母からその味を引き継いだ比内地鶏のがらスープ、地元の野菜(舞茸・ごぼう・ネギ・セリ)、そして放し飼いで伸び伸びと育てた比内地鶏のお肉が入ります。

驚いたのは、この店のきりたんぽの大きさ。1本に小ぶりなお茶碗で2杯半分のあきたこまちが使われるそうで、これを手でちぎって鍋に入れるため、一段と味がよく染みるのだとか。

もっちりとしたきりたんぽを、食べやすい大きさにちぎって鍋へ。手順を一つひとつ丁寧に説明してくれる

もっちりとしたきりたんぽを、食べやすい大きさにちぎって鍋へ。手順を一つひとつ丁寧に説明してくれる

でき上がったお鍋は、きれいに取り分けてもらっていただきます。かめばかむほど旨みを感じる比内地鶏の美味しさに舌鼓。醤油味のスープも比内地鶏のダシで、体にやさしく染みわたるような味わいでした。

やさしく気さくな笑顔とほっこりとする秋田弁でもてなしてくれた女将が食後に出してくれるお茶は、大館の伝統工芸、曲げわっぱの湯呑みで供されます。秋田杉の良い香りがお茶の風味と溶け合い、最後までおもてなしの心を感じて大満足の食事を終えました。

お皿にきれいに盛り付けて完成

お皿にきれいに盛り付けて完成

大館ならではのふれあいと美味を体験し、すっかり秋田犬ときりたんぽ鍋のファンになった今回の旅。次回は、大館市に隣接する小坂町へ。鉱山として栄えた歴史を伝える建造物や、産業遺産を体験型施設として活用した小坂鉄道レールパークを訪ね、秋田県北部のさらなる魅力を探ります。(掲載の情報は、2018年6月1日現在のものです)

取材後記 取材後記

『あきたいぬ』を訪ねて

昭和6年に、国の天然記念物となった秋田犬。もともとは「大館犬」と呼ばれていて、もっと全国の人に知ってほしいという想いから現在の名前に変更されたそう。あまり広くは知られていませんが、「あきたけん」ではなく、「あきたいぬ」と読むのが正式名称です。今回の取材では、そんなルーツや魅力を探るなかで、たくさんの秋田犬と出会いました。

受付嬢 ユキちゃんがお出迎え

受付嬢 ユキちゃんがお出迎え

博物室でさまざまな資料の展示が見られる「秋田犬会館」。さらに、平日ならば秋田犬が出勤していると聞き、ワクワクして伺った取材当日。会館内の事務所に入ると、受付嬢のユキちゃん(メス)がお出迎え!愛くるしい表情と、秋田犬の中でも珍しいきれいな白毛が印象的です。その後ろでは、赤毛のぷーこちゃん(メス)も元気いっぱいに迎えてくれて、貴重なふれあいの時間を過ごすことができました。

秋田犬の看板娘に会える
温泉宿

秋田犬の看板娘に会える温泉宿

取材中に“人懐っこい秋田犬に会える”と教えていただき、急遽訪ねたのが「ふるさわおんせん光葉館」。本誌冒頭の写真にも写っている、ニプロハチ公ドームの近くにあり、日帰り入浴のほか宿泊もできる温泉宿です。こちらでは、赤毛の「温(はる)ちゃん」(メス)が飼われていて、看板娘として活躍していました。やんちゃで、人懐っこい性格が大人気なのだとか!海外から来られるお客様も多いそうです。

今回の旅のまとめ

今回、大館へ伺ったのは3月末。まだどれだけ雪が残っているのか、取材スタッフで心配しながら向かいました。しかし、現地へ到着してみると雪は少なく、見事なまでの快晴!順調に取材を行うことができました。もう一つ、とてもラッキーだったのが、偶然お散歩していた秋田犬に出くわしたり、おすすめスポットを教えていただいたりしたおかげで、合計10頭もの秋田犬に出会えたことです。また、思いがけず、赤毛、虎毛、白毛、すべての毛色の秋田犬を間近で見られたことも幸運でした。ご協力いただいた秋田犬と飼い主様、本当にありがとうございました。さまざまな癒しや感動が待っている、今話題の秋田犬のふるさと・大館市。ぜひ、この機会に足を運んでみてくださいね。次回もお楽しみに!

ユキちゃん

左:大館駅前で偶然ふれあうことができた虎毛の純ちゃんと、その娘の天(てん)ちゃん 右:秋田犬会館でお会いしたエンジェル・イタイさんと桂城姫(けいじょうひめ)ちゃん

温ちゃん

取材日:2018年3月某日