令和への改元とともに篠山市から市名を変更した丹波篠山市。2020年のNHK大河ドラマの主人公、明智光秀による丹波攻めの舞台となった高城山も同市にあります。
江戸時代に城下町として栄えたこの地は、篠山城跡の周囲に当時の面影を残す町並みが広がり、秋には特産品の丹波栗を目当てに多くの観光客で賑わいます。地元の人も口を揃えて「おいしい」「ぜひ味わってみてほしい」と言う、丹波栗のふるさとを訪ねました。
安政2年創業の老舗が作る、
栗和菓子に舌鼓
四方を山で囲まれた丹波篠山市は、秋の紅葉がひときわ美しい場所です。
秋の色に染まる周囲の山々(画像提供:丹波篠山市)
なかでも今回訪れた篠山城跡城下町では、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された趣深い町並みも一緒に楽しむことができます。
昔ながらの町並みが残る「河原町妻入商家群」(画像提供:丹波篠山市)
篠山城跡の北側にある和菓子処「清明堂」は、大正時代に建てられた趣のある町屋造り。店に入ると、ほのかに甘い香りを感じました。
店舗は篠山城跡のすぐ近く、丹波篠山のメインストリートに立つ
「丹波栗、丹波黒豆など、地元の恵みを活かしたお菓子作りをしています」と五代目主人。昼夜の気温差が激しい丹波地方は、栗も黒豆も大きく、おいしく育つのだと教えてくださいました。
清明堂の五代目、藤本寿郎さん
看板商品である「栗まん」は、栗をかたどった素朴で愛らしい姿。口に含むと丸々一粒入ったホクホクした栗と上品な白餡の風味が広がります。生地は丹波焼のすり鉢で作ると聞き、地元への強いこだわりが伝わってきました。
清明堂の「栗まん」。栗に似せるため、一部分にケシの実がつけられている
9月下旬からは銀寄という栗を使った期間限定の栗おはぎや栗きんとんが登場します。
「丹波の銀寄は香りがよくてね。皮を剥くと、工場内が銀寄の香りでいっぱいになるんですよ」
ご主人の丹波栗への愛情をひしひしと感じながら、さらなる魅力を求め、街歩きを続けることにしました。
古きよき酒蔵で、洒落た
栗のリキュールに出会う
丹波栗で造る珍しいリキュールがあると聞き、鳳鳴酒造を訪ねました。
こちらは、寛政9年創業の江戸時代から続く老舗の蔵元です。見学施設の「ほろ酔い城下蔵」には、昔の酒造りの様子と道具が展示されており、見学後は試飲もできます。
国の有形文化財に登録されている酒蔵見学施設「ほろ酔い城下蔵」(画像左:外観/右:見学コース)
ここではかつて、丹波栗ともち米を発酵させた甘くてトロッとしたお酒を造っていましたが、もっと気軽に飲めるようにと開発されたのが、日本酒をブレンドした丹波栗のリキュール「マロンデキッス」です。
酒蔵としてのこだわりが詰まった「マロンデキッス」
「冷やしてからストレートで飲むのがおすすめ。バニラアイスにかけてもおいしいですよ」と教えてくださったのは鳳鳴酒造の西尾千鶴子さん。
丹波篠山について、「秋の味覚と歴史ある町並みが魅力」と語る西尾さん
試飲してみると、さらりと口当たりがよく、甘さと酸味のバランスも絶妙で、栗のやさしい香りが鼻を抜けていきました。栗で造ったリキュールは全国的にも珍しく、丹波らしいお土産としてもぴったりです。
ほろ酔い地下蔵では試飲可能なお酒が豊富にあり、その場で購入もできる
秋は丹波栗のおいしい季節。毎年9月中旬から10月下旬にかけて「丹波栗食べ歩きフェア」が行われ、70以上の店舗が参加し、丹波栗を使ったスイーツなど様々な期間限定メニューが並びます。歴史ある町並みを楽しみながら、この地ならではの秋の味覚を味わってみてはいかがでしょうか。
今回の取材でまず最初に尋ねたのは兵庫県職員の中山さん。
丹波栗食べ歩きフェアの実行委員で、フェアの概要や丹波栗の特徴のほか、「美しい田園風景にも癒されます」と丹波篠山市の魅力も語ってくれました。
そして篠山城跡付近の散策へ。
城跡の西側にある武家屋敷群は趣もあり落ち着いた雰囲気。
復元された大書院には様々な展示がされているそうですが、時間の関係で入館は断念…。大書院の周りは自由に散策でき、遊歩道をぐるりと一周。見晴らしがよく、町や遠くの山を眺めることができます。
清明堂では、かつて使われていた焼印をつけるための焼きごてなど、和菓子作りの古い道具を見せながらお店の歴史を紹介してくれました。
店内に飾られている古い和菓子の木型には「安政2年」と記されたものが多いため、創業はだいたいそのぐらいだろうと説明してくれたご主人。
そういうことであれば、それより古い可能性もゼロじゃないのでは?とひとりで勝手に興奮していました。
ほろ酔い城下蔵では、まずは見学コースを見せていただきました。
ここはマロンデキッスをはじめとするリキュール類の製造のために今でも使われているそうです。
展示されている昔の道具類はどれも大きく、西尾さんは「こんな道具で担ぐのも重かっただろうとか、想像しながら見ていただきたい」とおっしゃっていました。
東京から丹波篠山まで、日帰り取材だった今回。
お土産を買う時間がなかったのですが、各取材先から特別にマロンデキッスと栗まんをいただいたので、ありがたく自分へのお土産とさせていただきました。
丹波栗食べ歩きフェアが始まれば、その時期限定メニューを出すお店がたくさん出てきます。なるべく多くの種類を楽しむために、みなさんは時間に余裕を持って行ってくださいね!