Cedyna News for Premium Members 7月号より

利根川流域にあり、江戸時代には江戸へ運ぶ荷の集積地であったことから、水運業や醸造業をはじめ商業の町として栄えた佐原。
道路が整備される昭和4 0 年代までは、集落の間を縦横に走る水路を舟で行き来する暮らしがあり、嫁入りも舟で行われていた土地柄です。
かつての面影を残す歴史的な町並みや、町を南北に流れる小野川沿いの柳や、ハスの群生など、水郷ならではの風情を感じる旅をお届けします。

江戸情緒に包まれた
柳が揺れる小野川界隈

江戸時代、小野川沿いには河岸問屋や醸造を営む商家が軒を連ねていました。関東で初めて国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されたこの一帯は、当時の繁栄を偲ばせる店舗や蔵が今も残り、散策が楽しいエリアです。

小野川の町並み

この町並みは、小野川を遊覧する舟から眺めることもできます。舟は、約30分かけて小野川を往復、ゆっくり進みます。川面から見上げる古い町並みは両岸に青葉を垂らす柳に彩られ、情緒たっぷり。

舟からの景色

小野川を運航する舟からの景色

船頭さんによると、かつて小野川は荷下ろしをする舟で渋滞するほど賑わっていたそうです。今も何ヵ所か残る“だし”と呼ばれる荷揚げ場は、多い時で180ヵ所もあったというから驚きです。

だし

水郷としての歴史を思わせる“だし”

川風を感じながら、往年の佐原に思いを馳せる、のんびりとした水上散歩ができました。
舟を降りたら、創業約220年の老舗「正上」へ。

老舗「正上」

舟運により江戸時代に醸造文化が栄えた佐原で、醤油屋として江戸の台所を支えた歴史あるお店です。家業の醤油を使った佃煮や、現代感覚と調和させた発酵食品を手作りしています。
看板商品のいかだ焼きは、イカダ状に串に刺して調味したワカサギの佃煮です。魚本来の風味を活かしたやさしい味わいで、ご飯が何杯でも進む美味しさでした。

オリジナル商品

自家製醤油を使用したオリジナル商品の開発にも力を入れている

近くには日本地図を作った測量家・伊能忠敬の旧宅がありました。こちらは忠敬が17歳から50歳までを過ごした家で見学も可能です。

伊能忠敬の像

醸造業などを営んでいた伊能家の土蔵造りの店舗。庭には伊能忠敬の像が立っている(※写真右下)

ほかにも「伊能忠敬記念館」や、「水郷佐原山車会館」もあり、佐原の歴史や伝統を学ぶことができます。

伊能忠敬記念館と水郷佐原山車会館

伊能図の緻密さが分かる「伊能忠敬記念館」

水生の花々が咲き誇る
夏のあやめパーク

2年前にリニューアルした水郷佐原あやめパークは、ハナショウブをはじめとする植物が楽しめる公園です。7月から8月にかけて、約300品種のハスが咲くハス回廊が見頃を迎えます。

夏のあやめパーク

「特に千弁蓮(せんべんれん)という品種は、その名の通り千枚以上あると言われるほどたくさんの花弁が重なり合っている姿に、皆さん驚かれますね。ハスは朝早く咲いて昼頃には閉じてしまう花なので、ぜひ午前中にお越しください」と、香取市商工観光課の奈良さんが教えてくださいました。

千弁蓮

うまく開かないほど花弁が重なり合っている千弁蓮

サッパ舟という小舟で、ハスが群生する園内の池を巡ることもできます。昔ながらの絣の着物にボッチ笠をかぶった女船頭さんの話を聞きながら間近に見るハスの花は、また格別です。

園内舟巡り

5~6月には約400品種、150万本のハナショウブが咲き誇る(※写真左)。
4~10月は園内舟巡りができる(※写真右)

佐原を訪れた際は、ぜひ舟からゆっくりと景色を眺め、水郷らしい風情を存分に楽しんでみてはいかがでしょうか。

TOPIC
江戸から300年続く
「佐原の大祭」

夏と秋の年2回開催される「佐原の大祭」は、ユネスコ無形文化遺産にも登録された山車祭りです。圧倒されるほどの大きな人形を載せた山車が、佐原囃子の音と共に曳きまわされ、佐原は熱気に包まれます。

各山車

各山車は、人形の大きさによるが8~9mもの高さがある

2019年の夏祭りは7月12日~14日、秋祭りは10月11日~13日の開催予定です。

各山車

山車は「水郷佐原山車会館」に常時展示されており、夏祭りと秋祭りの前後に入れ替えられるため毎年違った展示内容が楽しめる

掲載している店舗・施設の詳細は
下記HPよりご確認いただけます。

株式会社ぶれきめら(小野川観光遊覧船)
http://www.kimera-sawara.co.jp/

正上
https://www.shoujyou.com/

伊能忠敬旧宅
https://www.city.katori.lg.jp/sightseeing/meisho/rekishi/s_kyutaku.html

伊能忠敬記念館
https://www.city.katori.lg.jp/sightseeing/museum/

水郷佐原山車会館
http://www.city.katori.lg.jp/sightseeing/matsuri/dashikaikan/

水郷佐原あやめパーク
http://www.city.katori.lg.jp/sightseeing/ayamepark/index.html

(掲載の情報は、2019年6月1日現在のものです)

取材後記 取材後記

今回は東京からも近い佐原だったので、まず3月中旬に下見をしました。
この日は晴天!暑いくらいの陽気の中、佐原散歩を楽しみます。

サツマイモアイスとサツマイモタルト

佐原はサツマイモの特産地。サツマイモアイスとサツマイモタルトを見つけたので美味しくいただきました。

さわら雛めぐり

小野川のサッパ舟に乗り、風を感じながら町を見上げます。この時期は「さわら雛めぐり」というイベントをやっていて、すべての“だし”(荷揚げ場)にかわいい雛人形が飾られていました。

白鳥

少し進むと白鳥を発見!この小野川で生まれ育ったらしく、舟が近づいても全く逃げるそぶりをみせません。野生の白鳥をこんなに至近距離で見たのは初めてです。
そんなこんなで楽しく下見を終えて、後日プロカメラマン同行のもと改めて取材へ。この日は撮影に備え、サッパ舟を1時間貸切予約しておりました。
満を持してサッパ舟に乗りこむと…

サッパ舟

雨!
なんというタイミングで降り出すんだ雨!!

サッパ舟

屋根つきの舟もあるのですが、撮影の為だから雨ざらしのまま、傘を隠して必至で笑顔をつくります。

雨が上がりの小野川

夕方には雨が上がり、街頭に灯りがついた佐原もとても良い雰囲気。
撮影はドタバタでしたが、どこか昔懐かしいこの光景にとても癒されました。