Cedyna News for Premium Members 6月号より

塩尻市は、寒暖の差、雨の少なさ、日照時間などが、ワイン銘醸地であるフランスのボルドーやブルゴーニュ南部地方によく似ており、ワインを生むのに好適な条件が揃っています。
塩尻産のワインは、権威ある国際ワインコンクールで1989年から2年連続で大金賞を受賞しました。これを機に塩尻ワインは、日本のみならず世界の「Shiojiri」として称賛を集めているのです。
今や市内には12社ものワイナリーが集い、高品質のワインを醸造しています。今回は塩尻ワインの魅力や、この地ならではの食を堪能する旅を楽しみました。

塩尻ワインの魅力は
原料となるブドウの甘味と
酸味のバランス

最初の訪問先は2015年創業のサンサンワイナリーです。半世紀にわたってワイン醸造に携わるゼネラルマネージャーの戸川英夫さんに案内していただきました。

サンサンワイナリーの戸川英夫さん

こちらは塩尻市のワイナリーで最も標高が高い場所にあるため、冬の厳しい寒さで枯死してしまうブドウもあり、ブドウの木に手作業で稲ワラを巻いてしのいできました。

ブドウ畑は標高840~864m、8%の傾斜で風通しの良い西向きに広がる

しかしこの過酷な気象条件こそが、ブドウに充分な甘みとピリリとした酸味というバランスの良い味わいをもたらしたのです。

ホワイトオーク樽のなかでワインは熟成する

こうした環境で作られたワインを、試飲コーナーで愉しむことができます。
最初にいただいた白ワインはすっきりと飲みやすく、思わず「美味しい!」と笑顔がこぼれ、次のワインに期待が膨らみます。

自分好みのワインを探せる試飲コーナーも設けられている

赤ワインは透明感のあるきれいな色合いで、果実由来のコクのある滑らかな味わいと、それを引き締めるキリッとした酸味とのバランスが絶妙でした。数種類を飲み比べると、同じ畑ながら日照や土質の若干の違いによって全く異なる味わいです。「これがワインの面白いところです」と戸川さんは言います。ワインの奥深さを知ることができました。

サンサンワイナリー戸川さんに聞きました!
専門家が教える
ワインがもっと愉しめる豆知識

●美味しいワインの見分け方
ポイントは色の“きれいさ”。
赤も白も透明感のあるきれいな色を選びましょう。

●ワインの保存方法
未開封のワインは、直射日光を避け、温度が15度前後の場所で保存しましょう。開封後のワインは、空気にふれる面積を少なくするのがポイント。小瓶に移し替えるか、真空ポンプ器具でボトル内の空気をできる限り抜いてから冷蔵庫で保存すると、1週間ほど品質が保たれます。

●ワインの飲み方・新定番
甘口の赤ワインには、氷を入れると常温よりすっきりした味わいになるのでおすすめです。

塩尻の風土が育んだ食の恵みと
ワインのマリアージュ

次に向かったのは塩尻ワインも堪能できる完全予約制のフレンチレストラン「ラ・メゾン・グルマンディーズ」です。オーナーシェフの友森隆司さんは、この地でレストランを開いた理由を「塩尻産野菜の旨みにほれ込んだから」と言います。

「ラ・メゾン・グルマンディーズ」のオーナーシェフを務める友森隆司さん

「苦みや甘みという野菜本来の味わいがあるのです。塩尻ワインにはテロワールという土の香りが楽しめるものが数多くありますが、同じ土壌から生まれた野菜とワインはとても相性が良いのです。素晴らしいワインに負けない、この土地でしか味わえない独自のフレンチを目指しています」

地野菜を使ったフレンチが味わえる

また、湿度の低い塩尻の気候は、木工職人にも愛されています。「家具工房スタイル・ガレ」の代表・藤牧敬三さんがこの地に構えたギャラリー「ガレ・エフ」には、ワインのおつまみを載せるのにぴったりなカッティングボードがありました。自宅で塩尻ワインを愉しむ時などに、素敵なシーンを演出できそうです。

カッティングボードなどのカトラリーも販売

今回の旅は、厳しい自然環境に寄り添ってワインを醸造するワイナリーや、この土地ならではの良いものを生み出そうと挑戦を続けるシェフ、そして職人の想いにふれるひと時でもありました。塩尻を訪れ、豊かな自然や人々の情熱が創り出すこの地の魅力を味わってみてはいかがでしょうか。

掲載している店舗・施設の詳細は
下記HPよりご確認いただけます。

サンサンワイナリー
https://sun-vision.or.jp/sunsunwinery/

ラ・メゾン・グルマンディーズ
https://www.facebook.com/la.maison.gourmandise/

スタイル・ガレ
http://www.stylegalle.com/

(掲載の情報は、2019年5月1日現在のものです)

取材後記 取材後記

本編では取り上げられなかった「塩尻駅」にも大きな見所があります。

毛ブドウ棚

ホームのブドウ棚!駅構内にブドウ棚があるのは国内で唯一、塩尻駅だけなんだとか。

ワイン樽のオブジェ

駅舎の窓にはブドウの房と蔓をモチーフにした鉄細工がはめられ、至る所にワイン樽のオブジェがあるなど、さすがワインの町!といった造りです。

サンサンワイナリー

色や風味の「きれいなワイン」を目指すサンサンワイナリーでは、衛生管理も徹底されています。
タンクは清掃しやすいように、取り出し口を人が入れるサイズにした特注品です。

試飲コーナー

そしてお待ちかねの試飲コーナー!美味しすぎて笑っちゃう取材陣。
私のお気に入りは「クリスタルコンコード2015」。(※写真左下)
とっても甘いけれど上品な味わいのデザートワインで、とにかく美味しかった!!

フレンチレストラン「ラ・メゾン・グルマンディーズ」

こちらはフレンチレストラン「ラ・メゾン・グルマンディーズ」の外観。
ブドウを食べているかわいいシェフのキャラクターが目印です。

ギャラリー「ガレ・エフ」

家具職人・藤牧さんのギャラリー「ガレ・エフ」は、ご覧の通りのおしゃれな空間が広がっており、こんな素敵な家具に囲まれて暮らしてみたい…としみじみ感じました。

取材が終わり、名残惜しくも帰ろうと駅に行くと、朝には無かった大きなホワイトボードが。

感謝とエールの言葉

取材に行ったのは3月の頭で、卒業式シーズンでした。
駅員さんから卒業生へ向けて、感謝とエールの言葉がびっちりと書かれています。
塩尻市民でも卒業生でもない私ですら目頭が熱くなるこの粋な計らい。思いがけないところで、塩尻の魅力を発見できました。