Cedyna News for Premium Members 5月号より

直島は瀬戸内海に浮かぶ周囲16㎞、人口約3,100 人の小さな島です。
フェリーを利用して岡山県の宇野港からは20分、香川県の高松港からは50分の距離にあります。国内外の芸術家や建築家たちが手掛けた現代アートの恒久展示を行っていることから、現代アートの島として世界的にも有名です。
時代に先駆けたアートが出迎えてくれる直島の玄関口・宮ノ浦と、古い町並みを活かした独自のアート活動を展開している本村地区を訪ねました。

作品が風景に溶け込む
アートなターミナル

「直島の宮浦港に降り立った来訪者が最初に触れるアート作品―それはフェリーターミナル「海の駅なおしま」です。真っ白な一枚屋根を細いポールが支える平屋構造、壁の数ヵ所は鏡張りで港の風景が映ります。

フェリーターミナル「海の駅なおしま」はプリツカー賞を受賞した建築家ユニットSANAAの設計

ターミナルの芝生広場では、草間彌生氏の作品「赤かぼちゃ」が青空との鮮やかなコントラストを描いて迎えてくれました。

草間彌生「赤かぼちゃ」2006年 直島・宮浦港緑地
水玉のいくつかはくり抜かれているので内部に入ることができる(※写真右下:内部)

その向こうに見えるのは、ステンレス網で構成された「直島パヴィリオン」です。現代アートが昔ながらの港の風景に違和感なく溶け込んでおり、とても不思議な感じがしました。

27島から成る直島諸島の28番目の島をコンセプトに制作された「直島パヴィリオン」
直島パヴィリオン 所有者:直島町 設計:藤本壮介建築設計事務所

「それは、この島が新しいものを受け入れる歴史を重ねてきたからだと思います」と、直島町まちづくり観光課の八頭司浩行さんが話してくださいました。直島は古くから瀬戸内海の交通の要所として開かれていて、常に人やものが行き交っていたのです。

直島の魅力を話してくれた、直島町まちづくり観光課の八頭司さん

「ですから、現代アートをすんなり受け入れる素地があります。来るものを拒まない懐の深さが、この島にはあるのです。おもてなしが大好きな人たちばかりですから、新しい施設ができ、人が集まることを歓迎する気持ちにあふれています」。

おもてなしの心が源泉
本村地区のアート活動

アートが暮らしを彩り、生活の一部になっているのが本村地区です。ここでは住民によるさまざまなアート活動が展開されており、そのひとつに、民家の軒先に綺麗なのれんを掲げる「のれんプロジェクト」があります。

染色作家である加納容子氏が各家の生業や歴史を聞き、その家の個性を表現しました。そのため、ひとつとして同じのれんはありません。

家の前をアートやのれんで飾り、美しく保つのも来訪者へのもてなし

手焼き煎餅の老舗「恵井高栄堂」ののれんには、お煎餅が描かれています。御主人は、焼き方や味付けにこだわり抜いた自身の作品ともいえるお煎餅を模したのれんを誇らしく感じているそうです。

話好きの御主人が焼く煎餅は小麦粉、卵、蜂蜜を使用した素朴な味わい

空き缶で作ったアートを展示販売する「よいち座」では、空き缶がモチーフののれんを見つけました。海が近いため、海風による傷みを配慮して厚めの生地が使われています。のれんは来訪者を楽しませたいという住民と、住民に対する作家の思いが共鳴し合って誕生した作品なのかもしれません。

よいち座ののれんと、空き缶アート作品(※写真右下)

島を歩いていると、人々が気さくに声をかけてくれます。一緒に歩きながら親切に島を案内してくれました。直島は、現代アートだけでなく人々の思いやりにもふれることができ、心温まる時間が過ごせる魅力的な場所です。

TOPIC
「瀬戸内国際芸術祭2019」開催

今年は3年に一度開催される瀬戸内国際芸術祭の開催年です。4月26日から春・夏・秋の3会期に分けて、直島を含む12の島々を中心に開催されます。
「海の復権」をテーマに、瀬戸内の島々に活力を取り戻すことを目指し、作品展示などさまざまなイベントが展開される祭典です。海外での認知度も高く、大勢の来訪があります。

「芸術祭では島の多彩な表情や魅力を感じていただけると思います」と語る、瀬戸内国際芸術祭実行委員会事務局の関守侑希さん

また、会期中はチャーター船で瀬戸内の島々をめぐるツアーが催行されます。それぞれの島の先鋭的なアートや文化をたどれば、非日常を感じさせる特別な旅となるでしょう。

2016年の開催に合わせ、宇野駅などの駅舎や列車にもアートが施された。
岡山駅~宇野駅間を毎週土曜には観光列車が走る(※写真右下)

掲載している店舗・施設の詳細は
下記HPよりご確認いただけます。

瀬戸内国際芸術祭
https://setouchi-artfest.jp

(掲載の情報は、2019年4月1日現在のものです)

取材後記 取材後記

ここでは直島の街角アートを、ほんの少しだけご紹介!

毛糸で描かれた猫

家の外壁に、毛糸で描かれた猫ちゃんや…

浮き球でつくったカエル

漁具の浮き球でつくったカエル

「直島港」のターミナル

本村地区の近くにある「直島港」のターミナルも、凝ったデザインです。

恵美須神社の鳥居

フォトスポットとして人気の恵美須神社の鳥居は、石を乗せると願いが叶うという噂を聞いたので、私も祈りながら乗せておきました。

恵美須神社の鳥居

さて今回は「アート」をテーマに取材をしてきましたが、直島の自然美も見逃せません。
カメラマンが、細~い木に登りながら必死に撮影したのが…

恵美須神社の鳥居

じゃん!とっても綺麗な夕陽!!
この感動、写真では伝わりきらないと思うので、実際にその目で確かめていただければと思います。
直島に行った際は、街角に散りばめられたアートや、自然がつくり出す絶景ポイントをたくさん見つけてください!